Private LoRaとLoRaWANのメリット・デメリット

1. はじめに

IoT(Internet of Things)の普及に伴い、低消費電力で長距離通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)技術が注目を集めています。その中でも、LoRa(Long Range)技術を用いたPrivate LoRaとLoRaWANは、多くの企業や組織で採用されています。本記事では、これら2つの技術のメリットとデメリットを詳しく解説し、それぞれの特徴や適用場面について解説します。

2. Private LoRaとLoRaWANの基本的な違い

Private LoRaとLoRaWANは、物理層にLoRa変調を使用した無線通信規格ですが、上位のMAC層が異なる特徴を持ちます。LoRaWAN は、LoRaAllianceが策定した標準規格で、異なるメーカーの機器同士での通信が可能です。通信処理にはLoRa専用のネットワークサーバーを使用します。一方、Private LoRa は、MAC層にメーカー毎の独自の通信プロトコルを使用しており、様々なアプリケーションや用途に対してカスタマイズが可能です。

3. Private LoRaについて

Private LoRaは、LoRa変調技術を使用しながら、独自のMAC(Media Access Control)層プロトコルを実装したプライベートネットワークです。ユーザーが自由にネットワークを構築し、運用できるという特徴があります。
日本国内のメーカーは、LoRaWAN対応製品よりもPrivate LoRa対応製品を開発しているメーカーが多いです。

3.1. Private LoRaのメリット

3.2. Private LoRaのデメリット

3.3. 弊社でのPrivate LoRa利用例

4. LoRaWANについて

LoRaWANは、LoRa Allianceによって策定された標準規格のネットワークプロトコルです。この技術の特徴として、デバイスとゲートウェイ間でN:N(多対多)のネットワーク構築が可能であり、これにより広域なネットワークを展開することができます。これは、Private LoRaがデバイスとゲートウェイ間でN:1(多対一)の接続に限定されているのとは異なります。

4.1. LoRaWANのメリット

4.2. LoRaWANのデメリット

4.3. 弊社でのLoRaWAN利用例

5. Private LoRaとLoRaWANの比較

以下の表で、Private LoRaとLoRaWANの主な特徴を比較します。

特徴 Private LoRa LoRaWAN
カスタマイズ性 高い 低い
通信コスト 低い 高い(公衆網利用時)
相互運用性 低い 高い
セキュリティ カスタマイズ可能 標準機能あり
開発コスト 高い(カスタマイズする場合) 低い
スケーラビリティ 中程度 高い
標準化 なし あり
ゲートウェイ管理 自己管理サービスプロバイダー管理可能
※自己管理可能なサービス・機器もあり

6. 適用場面の考察

6.1. Private LoRaに適した場面

6.2. LoRaWANに適した場面

7. 導入時の考慮点

Private LoRaやLoRaWANを導入する際は、以下の点を考慮することが重要です。

  1. デバイス数とスケーラビリティ 現在のデバイス数だけでなく、将来的な拡張性も考慮してネットワークを設計します。
  2. 通信範囲と環境
    建物の構造や地形などの環境要因を考慮し、必要な通信範囲を確保できるかを検討します。
  3. データ量と通信頻度
    送信するデータ量や通信頻度に応じて、適切な通信設定を選択します。
  4. セキュリティ要件
    データの機密性や完全性の要件を満たすセキュリティ対策を実装します。
  5. 運用コスト
    初期投資だけでなく、長期的な運用コストも含めて総合的に判断します。
  6. 技術サポートとエコシステム
    導入後のサポート体制や利用可能なデバイス・ソリューションの充実度を確認します。
  7. 規制対応
    各国・地域の電波法や周波数規制に準拠していることを確認します。

8. まとめ

Private LoRaとLoRaWANは、それぞれ異なる特徴と長所を持つIoT向け通信技術です。Private LoRaは高いカスタマイズ性と低い通信コストが魅力です。一方、LoRaWANは標準化された技術で相互運用性に優れていますが、公衆網利用時の通信コストや柔軟性に課題があります。公衆網ではなく独自にサービスを構築することも可能です。導入を検討する際は、アプリケーションの要件や運用環境、コスト、セキュリティなどを総合的に評価し、最適な選択をすることが重要です。また、技術の進化や市場動向にも注目し、将来的な拡張性や互換性も考慮に入れる必要があります。

9. Private LoRaとLoRaWANに関するFAQ

Private LoRaとLoRaWANの通信距離に違いはありますか?
物理層で使用しているLoRa変調技術は同じであるため、原則として通信距離に大きな違いはありません。ただし、Private LoRaでは通信パラメータをカスタマイズできるため、特定の環境下では通信距離を最適化できる可能性があります。
Private LoRaを使用する場合、近隣の他のLoRa通信の影響を受けませんか?
Private LoRaに限らず、920MHz帯を使用する他の無線機器からの干渉を受ける可能性があります。
LoRa通信で音声通話は可能ですか?
LoRaは通信速度が遅く、連続通信ができないため、リアルタイムの音声通話には適していません。IoTデバイスからの少量のデータ送信に適した技術です。
Private LoRaとLoRaWANのどちらが省電力ですか?
両者とも低消費電力で動作しますが、LoRaWANは標準規格として省電力動作が最適化されています。一方、Private LoRaではカスタマイズにより、特定の用途でより省電力な動作を実現できる可能性があります。
通信距離はどのくらいですか?
見通しがよければ半径10km程度でも通信が可能です。市街地でゲートウェイをビルの屋上に設置した場合、半径2km~3km程度の通信が可能です。ただし、通信環境や設置状況、LoRa設定により大きく変動します。
免許は必要ですか?
LoRaモジュール及び製品は特定小電力無線となり、日本国内では免許なしで使用できます。
バッテリー寿命はどのくらいですか?
使用状況によって異なりますが、ボタン電池1つで数年間の運用が可能なケースもあります。